家を建てる際には、建物の歪みを防ぐことが重要です。歪んだ家は、見た目が悪くなるだけでなく、耐震性や耐久性にも問題が生じる可能性があります。
家をまっすぐに建てるために、職人はさまざまな技を駆使します。ここでは、職人の技で家をまっすぐにする方法と、建物の歪みを防ぐための対策について解説します。
この記事を読んでから基礎工事や建前中の現場を通りすがりにでも見てみると、なんとなくでも何をしているのか分かるようになるはずです。近くでそういう現場があれば少し意識して見てみてください。
住宅の工事してるところは何度か見かけたことがあるけど
そこまで気にしてみたことなかったな。
分かりやすいように実際の骨組みができるまでの
工程に沿って説明していこう
基礎工事
基礎工事の段階ではまだ大工は登場しませんが、ここでも職人の技が建物に大きな影響を及ぼすので確認しておきましょう。
そもそも基礎とはどういった部分でしょう。
このようにコンクリートで出来た、まさに住宅の基礎となる部分になります。
基礎工事の工程
一般的な工程は次の通りです。今回は細かい説明は省略しおおまかな流れだけにします。
- STEP1建物の位置を出す
遣り方や丁張などといわれる工程です。木の杭と貫と呼ばれる板で建物の位置と高さの基準を作ります。
- STEP2根切り
基礎ができる部分を重機等で掘っていく作業になります。
- STEP3砕石を入れる
掘った部分に砕石をいれてしっかりと機械を使って締め固めます。
- STEP4鉄筋・型枠
逆T字型の鉄筋と下部の型枠を組んでいきます。
- STEP5コンクリートの打設
下部のコンクリートを打設したら、その上に立ち上がり部分の型枠を組んでさらにコンクリートを打設します。
- STEP6天端均し
ここで基礎の上を水平にしていきます。
- STEP7脱型
打設後数日間の養生期間をおいたら型枠をばらしていきます。
- STEP8埋戻し
ここで最初に根切りした部分に土を埋戻して完了です。
STEP6 の天端均しで建物が水平になるかが決まることになります。
基礎の上を水平にする
コンクリートを流して上を平らに均したとしても、なかなか端から端まで水平にはいきません。
そこで、セルフレベリングという方法で水平にしていきます。
これは液体は水平になるという性質を利用したもので、事前に厚さが1~2cmくらいになるようにコンクリートの上に高さの基準になるものをセットしておき特殊なセメントのような粉と水を混ぜてトロトロの状態(これをレベラーといいます)にして流し込んでいきます。
もちろんこのレベラーは一日ほどでがっちり固まります。
完全な液体ではないため高さを見ながら上手く流していく必要があります。
そうすると基礎の上面は自然と水平になり、自ずと建物も水平に建つようになります。
土台敷き
基礎工事が終わるといよいよ大工の仕事になります。
土台敷きの工程
ここも大まかな工程を確認してみましょう。
- STEP1墨出し
これは基礎の上に基準となるラインを引く作業です。大工は墨坪という道具を使い、糸に墨汁を付けてピンと張って弾くことで長い直線を引いていきます。
- STEP2土台の穴あけ
土台と基礎はアンカーボルトという金物で緊結しなくてはなりません。そのため基準の墨を頼りに正確にアンカーボルトの位置を土台に写して穴をあけます。
- STEP3基礎パッキン
床下の通気の為に土台の下にいれるパッキンを並べておきます。
- STEP4土台を組む
穴をあけた土台を順番に組んでいきます。
- STEP5締め付け
土台の歪みが無いことを確認しアンカーボルトを締め付けていきます。
- STEP6床断熱
土台の間に断熱材をはめ込んでいきます。金具を使って落ちないようになっています。
- STEP7床合板
最後に床の合板を敷いて釘打ちして完了です。
STEP1の墨出しの段階で正確に直角になるように墨を出さなくてはなりません。
基準が曲がっていると建物自体も曲がってしまいます。
大工が直角を出す方法
中学校で習った三平方の定理(ピタゴラスの定理)っての覚えてますか?
大工はこの公式をよく使います。今回は紹介だけにしておきますが直角を出す以外にも屋根材の斜めの材料(垂木等)の長さを求めたり、手加工での階段の加工でも使ったりします。
大工は「345」なんて言ったりしますが、3・4・5を当てはめると
32+42=52 → 9+16=25 となるので3:4:5の三角形は直角三角形となります。
これを利用して正確な直角の線を出していきます。
建物の大きさにもよりますが 3m:4m:5m か 6m:8m:10m を使います。より大きい方が正確なので後者が使える大きさの建物であれば後者の方を使って出していきます。(測量機器を使って出すことも出来ますが、古くから現在まで利用されてる方法ということで今回はこちらを紹介)
こうやって出した直角の墨を基準にしてすべての基礎の上に寸法通りに墨を付けていきます。
上の図では基礎の真ん中に墨を書いていますが、実際は真ん中にはアンカーボルトがあって上手く出せないので、少しずらすか土台の側面の位置で出します。
あとはその墨を頼りに土台へアンカーボルト等の印をつけて穴をあけていきます。
土台を組んで最後に再度直線・直角を確認して完了です。
建て方
土台敷きがおわったら今度はいよいよ柱を建てて梁を組んでいきますが、ここで大事なのは柱が垂直に建っているかどうかです。
垂直になっていないと建物が歪む原因になるのはもちろんですが、内部の至るところに影響が出てきてしまいます。
特に真壁づくりの木製建具等にはもろに影響を受けて、戸と柱の間に隙間ができる原因になります。
建て方の工程
今は様々な工法で建てられますが、今回は在来工法の工程を簡単に確認してみましょう。
- STEP11階の柱
柱は1本1本場所と向きが決まっていて「いろは」と数字の組み合わせの番付でそれぞれ分かるように書いてあります。「い通り」や「一通り」といい「いの一」や「はの三」と呼びます。それをしっかり確認しながら建てていきます。
- STEP22階の床梁
在来工法の場合、梁にも組む順番があります。というのも継手と呼ばれる部分は上から乗せて組むものもあるので順番が違うと組むことができません。
梁にも番付があるので確認しながら組んでいきます。
- STEP31階の屋起こし
こここが重要なポイントとなります。
下振りを使って柱の垂直を確認して調整します。調整するためのいろいろな道具がありますが調整用の道具を使って1階の床から突っ張ったり、引っ張ったりして調整していきます。
- STEP42階の床合板
床の合板を敷いて釘留めしていきます。屋起こしが不十分な状態で止めてしまうと歪んだまま動かなくなってしまうので必ず屋起こしが完了してからにします。
- STEP52階の柱
1階の柱と同様に2階の柱を建てていきます。
- STEP6小屋梁
ここも2階床梁と同様。
- STEP72階の屋起こし
ここも1階の屋起こしと同様。
- STEP8小屋束・母屋・垂木
母屋まで組んだら小屋束も垂直を確認します。ここではそれほど高さも無いので水平器で確認します。それから垂木を留めていきます。
- STEP9完了
この後は屋根作業へ入っていきます。
垂直の確認方法
工程の中でも書きましたが、柱の垂直は下振りを使って確認していきます。通常の下振りだと風があると揺れてしまい正確にみることが出来ないので屋起こしの際には箱に囲われたような防風下振りというものを使います。
この段階では柱の上部(柱頭)は梁でつながっているので、同じ通りの1本が垂直になれば他も垂直になるので外周部のすべての通りと内部の数か所を確認すれば歪みは無くなります。
方法としては、専用の道具で突っ張ったり引っ張ったりして下振りを確認しながら調整して調整できたら仮に木の板などを斜めに釘打ちして固定します。
その後、外部の面材や筋交い等をしっかり入れたらもうがっちりして動かないので仮に打った木は外します。
まとめ
基礎工事~建て方の段階で様々なものを確認をしています。
- 基礎を水平にする。
- 土台を直角にする。
- 柱を垂直にする。
たったこれだけのことですが、これらを職人がきちんと行うことで建物はまっすぐに建っています。
ここまで読んでいただければ住宅の現場を見かけた時、今までとは少し違った視点で見れるのではないでしょうか。自分の家を建てる時も確認してるところを見れると安心できますね。
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